ベトナム戦争に関する問題

問題 ベトナム戦争を題材にした授業における先生と生徒の会話文と、資料 i を読み、下の問いに答えよ。


先 生:この資料の出された1954年の時点で、アメリカ合衆国国務長官ベトナムに対してどのような政策をとろうとしているでしょうか。
生 徒第二次世界大戦後のアジアでは、【 あ 】【 い 】などで社会主義政権が建てられていましたから、アメリカ合衆国国務長官ベトナムに対しても警戒していたのではないでしょうか。

先 生:そう思いますよね。でも次の資料 i を見てみてください。

 

資料 i 米国務長官ダレスの発言(1954年) 

「東南アジアは約2億の人口を抱えていますが、その中でインドシナに住んでいるのはせいぜい2500万人ばかりです。東南アジアはゴム・原油・錫などの宝庫ではありますが、これらのいずれもインドシナでは産出されません。東南アジアには幾つもの戦略的要衝がありますが、インドシナにあるのはたった一つ、サイゴンだけです。従って私は、インドシナが東南アジアのシンボルであるとか、インドシナが失われれば東南アジア全域を共産主義者に譲り渡すことにつながる、といった見解は重大な錯誤である、と考えております。」

f:id:sekaishi_go:20191217211811j:plain

ケネディマクナマラ

(アーネスト・メイ/進藤栄一訳『歴史の教訓一戦後アメリカ外交分析』、中央公論社、1977年、60頁)

 

生 徒:変ですね。これによると、アメリカ合衆国ベトナムに介入する意図はないように思えます。

先 生:そうですね。これは議会での発言ですから実際の意図とは異なるものであったかもしれませんが、興味深い発言ですよね。

生 徒:そもそも第二次世界大戦後のアメリカ合衆国は、社会主義が広まらないように国内外でさまざまな政策を展開していましたもんね。例えば、【 う 】ような例がありますね。
先 生:その通り。次の資料 ii を見てみよう。後に国防長官を務めることになるマクナマラという人物による、冷戦が始まったころの言葉だ。

 

資料 ii

「樽の中のりんごがたったひとつの(腐った)りんごのためにすべて腐ってしまうように、【 え 】が崩壊すれば、イランを初めイラン以東のすべての諸国が危機にさらされるだろう。さらには、小アジア、エジプトを通じてアフリカに、イタリア、フランスを通じてヨーロッパに、その影響が及ぼされることになるだろう。」

(McNamara, Robert S., In Retrospect:The Tragedy and Lessons of Vietnam, New York, N.Y.:Times Books, 1995,p.32.)

 

生 徒:ヨーロッパにソ連の影響力が及ぶことを防ごうとしたわけですね。マクナマラという人物はベトナム戦争に関係しているんですか?
先 生ケネディ大統領からジョンソン大統領の時代にかけて国防長官を務めた人物だから、ベトナム戦争の政策にも関与している人物だ。彼の回顧録を見てみよう。

資料 iii 

「私(マクナマラ)は[ケネディ政権参画時まで]インドシナに行ったことなどなかった。そこの歴史も言語も文化も、そして価値観も知らなかった。同じことは、程度の違いはあれ、大統領のケネディにも、国務長官ディーン・ラスクにも、国家安全保障担当補佐官マクジョージ・バンディにも、軍事顧問マックスウェル・テーラーにも、その他多くの者にも当てはまった。ベトナムに取りかかろうとした時、我々は自分達にまったく未知の分野といえる地域のための政策を策定する羽目となった。さらに厄介なことに、我々の政権は、我々の無知を補うべく意見を仰ぐような専門家を欠いていた。」

「もし我々が周囲にもっとアジア専門家を配していたならば、中国とベトナムについて、あれほどまでに単純な考え方はしなかったであろう。キューバ・ミサイル危機のときにはこうした専門家が揃っていた。ソ連問題に取り組む際も然りであった。しかし東南アジアを扱うとき、こうした専門家を我々は欠いていた。」

 

生 徒:遠く離れたベトナムに関する知識が薄かったのにも関わらず、アメリカはどうしてベトナム戦争に突き進んでしまったのでしょうか。

先 生:その背景には、少なからず過去の事例の影響もあると考えられる。例えば政権内には、かつて【 お 】のときにイギリスが和平を優先する対応を取ったことが、第二次世界大戦の勃発につながったという考え方も支配的であったようだ。

 

問1 【 あ 】【 い 】に当てはまる地域名の組合せが正しいものを選べ。

① :中国     :モンゴル
② :朝鮮     :中国
③ :モンゴル   カンボジア
④ :インド    :タイ

問2 【 う 】の例として誤っているものを一つ選べ。

① ヨーロッパの復興のための援助を計画した
② 「赤狩り」が進められた
③ オーストラリアとニュージーランドの間に軍事同盟を結んだ
④ ユーゴスラビアを情報機関から除名した

問3 【 え 】に当てはまる国名を答えよ。

問4 【 お 】の例として内容が適当なものを一つ選べ。

① ドイツがチェコスロヴァキアの領土の一部を要求したとき
② イタリアがチェコスロヴァキアの領土のの一部を要求したとき
③ フランスがスペイン内戦でフランコ政権を支援したとき
④ イギリスがスペイン内戦でフランコ政権を支援したとき

 

 

 

 

 

 

解答

問1 ②(なお、あ・いは順不同である)
問2 ④ 情報機関(コミンフォルム)から除名したのはソ連である。

問3 ギリシャ

問4 ① このような外交上のバイアスのことをミュンヘン・アナロジーということがある。