インディオに関する出題

問題 史料i~ivは、アメリカ大陸の先住民の状況や、彼らに対するヨーロッパ人の考察に関するものである。これに関する下の問いに答えよ。

史料i スペイン王の命により西廻り航路を探検した人物【 あ 】の航海日誌(1492年)

「10月11日 木曜日。…彼ら(【あ】の人物が上陸した島の住民)は善良な奉仕者であるべくまた気立てがよいに違いにない、というのは余が彼らにいいつけることは、なにによらず直ぐに話すのを見とどけたから。それで余は彼らが用意にクリスチャンになるだろうと信ずる。というのは、彼らはなにの宗教も持っていないと余には思われたから。余は、もし主の思し召しにかなうならば、出発の際、ここよりも6人のものを国王陛下の許に携えゆきて、言葉を習わしめる心組みである。…」
 

史料i スペイン人のある修道士【 い 】の主張(『インディアスの破壊についての簡潔な報告』)

キリスト教徒はインディオの身体を一刀両断にしたり、一太刀で首を斬りおとしたり、内臓を破裂させたりしてその腕を競いあい、それを賭け事にして楽しんだ。母親から乳飲み子を奪い取り、その子の足をつかんで岩に頭を叩きつけたキリスト教徒たちもいた。また、大笑いしながらふざけて、乳飲み子を仰向けに川へ投げおとし、乳飲み子が川に落ちると、「畜生、まだばたばたしてやがる」と叫んだ者たちもいれば、嬰児を母親もろとも剣で突き刺したキリスト教徒たちもいた。彼らは目の前にいたインディオ全員に、そのようなひどい仕打ちを加えたのである。さらに、足がようやく地面につくぐらいの高さの大きな絞首台を組み立て、こともあろうに、我らが救世主と一二名の使徒を称え崇めるためだと言って、インディオを一三人ずつ一組にして、絞首台に吊り下げ、足元に薪を置き、それに火をつけ、彼らを焼き殺したキリスト教徒たちもいた。そのほかにも、インディオの身体を乾いた藁で縛り、その藁に火をつけ、彼らを焼き殺したキリスト教徒たちもいれば、インディオを生け捕りにしようとした者たちもいた。彼らは生け捕りにしたインディオたちの両手を斬りつけ、両手が辛うじて〔皮一枚で〕腕に繫がっている状態にしておいて、「手紙をもっていけ」と命じた。つまり、山へ逃げ込んで身を隠したインディオのところへ見せしめとしてことの次第を知らせに行かせたのである。」

史料iii 史料iiの人物と論争したセプールベダによる主張
セプールベダ『征服戦争は是か非か』染田秀藤訳、岩波書店、1992年)

「人間の中には、自然本性からして主人である者と奴隷である者がいるのです。思慮分別や才能に優れた人々は、たとえ肉体的に頑強でなくとも、生まれながらにして主人であり、それに引き換え、必要な義務を果たすに足る体力を備えていても、愚鈍で理性に劣る人々は生来の奴隷です。さらに哲学者たちが付け加えて述べるところでは、生まれながらにして奴隷である人たちにとって、自然本性からして主人である人々に仕えるのは正しいことであるばかりか、有益なことでもあります。」 

 

 史料iv  ルネサンス期のフランスで活動した人文主義【 う 】の主張

「自分の習慣にはないものを、野蛮(バルバリー)と呼ぶならば別だけど、わたしが聞いたところでは、新大陸の住民たちには、野蛮(バルバール)で、未開(ソバージュ)なところはなにもないように思う。どうも本当のところ、われわれは、自分たちが住んでいる国での考え方や習慣をめぐる実例とか観念以外には、真理や理念の基準を持ちあわせていないらしい。あちらの土地にも、完全な宗教があり、完全な政治があり、あらゆることがらについての、完璧で申し分のない習慣が存在するのだ。彼らは野生(ソバージュ)であるが、それは、自然がおのずと、その通常の進み具合によって生み出した果実を、われわれが野生(ソバージュ)と呼ぶのと同じ意味合いで、野生(ソバージュ)なのである。

(1・30/31「人食い人種について」『随想録』より) 

問1 史料iiiivの人物【 あ 】【 う 】はそれぞれ誰か。

問2 史料iivの人物の主張①~④として、内容が正しいものをそれぞれ一つずつ選べ。

 ① 先住民には独自の信仰があるが、必ずキリスト教徒となるべきである。 
 ② 先住民には独自の信仰があり、必ずしもキリスト教徒となるべきではない。
 ③ 先住民には独自の信仰はなく、必ずキリスト教徒となるべきである。
 ④ 先住民には独自の信仰はないが、必ずしもキリスト教徒となるべきではない。

問3 史料iiiの下線部①について、以下は「哲学者たち」の一人による主張の一部である。この人物はプラトンを師としてあおぎ、アレクサンドロス大王の家庭教師を務めた人物でもある。この人物の名前を答えよ。

「もしすべての道具が、命令されて、または(命令を)予知して、ダイダロスアテネの伝説的芸術家〕が作ったという立像のように…みずからの仕事をなしとげることができるとすれば、…建築家に助手は要らないだろうし、また主人に奴隷は要らないだろう。」

 

 

 

 

 

 

問1 あ:コロンブス(コロン)、い:ラス=カサス、う:モンテーニュ

問2 史料i:③、 史料iv:②

問3 アリストテレス